死後事務委任契約の必要性
こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨今の社会情勢からなのか、男女ともに生涯未婚率が上昇し、2015年の人口統計資料からは、男性が約23%、女性が約14%未婚となり、今後も上昇することが見込まれています。
おひとりさまの方は、健康で働いている間は問題ないかも知れませんが、定年等で現役をリタイアした後、大病を患った後などは、自分の生前について、さらには死後について不安を覚えるのは当然のことかと思います。また、孤独死をするケースも散見されることから、単身高齢者が賃貸住宅への入居を断られることもあると聞きます。
生前については、認知症等に備えて成年後見制度の利用を検討することができますが、死後については成年後見制度ではカバーできません。
そこで今回は、死後の事務処理を誰かにお願いすることができる「死後事務委任契約」について説明したいと思います。
目次
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、その名の通り、自分(委任者)の死後の事務処理を誰か(受任者)にお願いする委任契約のことを言います。
具体的に事務処理とは、葬儀、埋葬、納骨はもちろんのこと、行政機関への届出、親族や友人知人への連絡、遺品の整理や処分など多岐にわたります。
例えば、葬儀であれば、「参列者を呼ばず、通夜や告別式などの儀式を一切行わず、自宅や病院から遺体を直接火葬場に運び火葬によって弔う直葬方式を希望する」や、「墓地は持たず遺骨は海に散骨してほしい」など、委任者の希望を事前に聴き取り、その内容を契約書に盛り込んでいきます。また、遺品ついても、「趣味で集めた書籍は廃棄せす市立図書館に寄付してほしい」なども該当します。
上記のことから、この契約を締結することにより、ご自身の死後の希望を叶えることはもちろんのこと、他人に迷惑を掛けたり行政に頼ることもなくなることが考えられます。また、おひとりさまには兄弟姉妹やその甥姪はいるが、「疎遠で付き合いもないので頼めない」、「第三者に頼んだ方が気が楽だ」とお考えの方も多くなってきているのではないでしょうか。
1点疑問を持たれる方もいるかも知れませんので説明しますが、通常委任契約は委任者又は受任者の一方が死亡した場合は契約が終了となりますが、この死後事務委任契約は委任者が死亡しても終了とはなりません。ここで詳細を書くことは省略しますが、司法もその判断を示しています。(平成4年9月22日最高裁判所判決)
(1)死後事務委任契約の締結までの流れについて
①受任者を決める。(親族、知人や友人、士業などの第三者など)
↓
②契約内容を決める。
死後お願いしたい具体的な主な内容について
・葬儀、納骨、墓地などについて
・行政機関、各種団体への届出について
・老人ホーム等利用施設の解約手続き
・電気、ガス、水道、携帯電話、クレジットカード等の解約手続き
・SNSなど各種アカウントの解約手続き
・受任者に支払う報酬額、預託金の金額について
・遺品整理について
↓
③契約書を作成する。
私文書でも問題ないが、公証役場で公正証書にて作成することをお薦めします。
↓
④預託金を受任者に預ける。
通常、死後に掛かる費用を事前に見積り、契約締結後、受任者に契約で決めた預託金を預けるのが一般的です。
(2)死後事務委任契約締結で注意する点について
この制度を活用するにあたり、いくつかの注意点がありますので、参考にしていただければと思います。
①遺言書も合わせて作成しておくことをお薦めします。死後に掛かる費用(預託金)を除いた財産(不動産、金融資産など)の処分方法を決めておく必要があるからです。
②受任者が委任者より先に死亡することも想定し、受任者2名以上と締結することも視野に検討することが必要です。(もちろん再度受任者を探して契約することも可能です。)
③預託金については、受任者に預けるのが一般的ですが、多額であるので不安がある方は信託会社に信託する方法もあります。(その場合、信託会社に支払う費用が発生しますが。)
終活についてのお悩みの方は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。
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