Blog ブログ

Blog

HOME//ブログ//自筆証書遺言の保管制度

ブログ

自筆証書遺言の保管制度

こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
7月10日より自筆証書遺言を法務局で保管する制度が始まります。それに先立ち7月1日からは各手続きのための予約受付が開始されます。
6月28日朝日新聞の朝刊1面にも記事「手書きの遺言 法務局で保管へ」が大きく掲載されていました。また法務省からは具体的な運用方法が発表されています。
今回は、この制度についての詳細と問題点について説明したいと思います。

目次

【1】自筆証書遺言の現状

現在、自筆証書遺言は、自宅の金庫、机、タンス、仏壇などに保管されていることが多く、紛失、亡失するおそれがあります。また、相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんされるおそれがあり、これらの問題により相続をめぐる紛争が生じている現状があります。
上記の対応策として、公的機関で遺言書を保管する制度を創設されることになりました。

【2】自筆証書遺言の保管制度について

この遺言書保管制度では、遺言者本人が遺言書を持参して保管申請を行うため、保管された遺言書は遺言者の意思に基づき作成されたことが強く推認されます。この制度を利用することにより、遺言書の滅失、隠匿、改ざんの防止につながり、また相続開始後、相続人が家庭裁判所に対して行う検認申請が不要になります。
この制度概要は以下となります。
【制度概要】
①全国の法務大臣の指定を受けた法務局に遺言書を保管することができ、自筆証書遺言の原本のほか画像データも保管されます。法務局が大規模災害に見舞われた場合、遺言書原本が滅失する可能性がありますが、遺言書保管開始時に画像データを別の場所で保管されることが想定されています。
②遺言書保管制度を利用するには、管轄の法務局に遺言者本人が出向いて保管申請を行います。保管申請には、所定の申請書、遺言者の本人確認書類、法務省令の方式に従ったむ封をしていない自筆証書遺言を提出する必要があり、また所定の手数料を納めなければなりません。
③遺言者が存命中は、原本を保管している法務局に遺言者本人が行くことにより、遺言書の返還や閲覧を求めることができます。また、遺言者本人以外は、遺言者の遺言が保管されているかを確認することができません。
④遺言者の相続開始後については、全国の指定された法務局で、申請書と所定の書類(戸籍関係書類など)を提出及び所定の手数料を支払うことで、遺言書の有無を照会し、遺言書の画像データなどを印刷した遺言書情報証明書を受け取ることができます。この遺言書情報証明書を受けとった場合や遺言書原本を閲覧した場合には法務局から、他の相続人、受遺者、遺言執行者等に対して、遺言書が保管されていることが通知されます。
⑤遺言書原本は、遺言者死亡後の返還は予定されておらず、一定期間経過後は廃棄され、画像データなども消去されます。

(1)遺言書保管制度の利用方法について

■遺言者が遺言書を預ける(遺言書の保管の申請)場合の流れ
①遺言書を作成する。(財産目録なども含め)
 ↓
②保管の申請をする遺言保管所(指定の法務局)を決める。
 申請可能な遺言保管所
 ・遺言者の住所地
 ・遺言者の本籍地
 ・遺言者が所有する不動産の所在地
 (例)東京都町田市にお住まいであれば、東京法務局八王子支局になります。
 ↓
③申請書を作成する。
・申請書の様式は、遺言保管所(指定の法務局)に備え付けのものを使用または、法務省ホームページ(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html)からダウンロードできます。
 ↓
④保管の申請予約をする。
1遺言保管所(指定の法務局)において行う全ての手続について,あらかじめ予約が必要です。
2予約は以下の方法となります。
・法務局手続案内予約サービスの専用ホームページで予約する。
【専用HHPはこちら】https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/
・遺言保管所(指定の法務局)への電話又は窓口で予約する。
 平日8時30分~17時15分まで(土日祝日と年末年始を除く。)
【全国の遺言保管所(指定の法務局)一覧】http://www.moj.go.jp/content/001322714.pdf
 ↓
⑤保管の申請をする。
1次のものを持参して、予約した日時に遺言者本人が遺言保管所(指定の法務局)に訪問する。
・遺言書、申請書、添付書類(発行3か月以内の本籍地記載の住民票等)
・本人確認書類(有効期限内のもの1点)→マイナンバーカー、運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、在留カード、特別永住者証明書など
・手数料(1通につき3900円)
 ↓
⑥保管証を受けとる。
・手続き終了後、遺言者の氏名、生年月日、遺言書保管所の名称及び保管番号が記載された保管証が渡されます。

その他、この制度の詳細を知りたい方は法務省の下記WEBページをご覧ください。
(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html)

(2)この制度利用で注意する点について

この制度を活用するにあたり、いくつかの注意点がありますので、参考にしていただければと思います。
①遺言書の保管の申請には、1件につき3900円の手数料を支払う必要があります。また、その他遺言者の関係相続人等が遺言書の閲覧の請求等を行うにも、800円~1700円の手数料が掛かります。
②全国すべての法務局(支局及び出張所)でこの制度を利用できる訳ではありません。東京では本局以外では4支局に限られていますので注意が必要です。
③自筆証書遺言作成には、民法で規定された形式要件があります。遺言書保管申請の際、この形式要件が事実上確認されることは想定されるものの、形式要件が充たされているかを保証するものではありません。よって形式不備による遺言の無効、内容不備により相続開始後争いになる可能性はありえます。
④遺言者が存命中は、遺言者本人以外は、遺言者の遺言が保管されているかを確認することができません。
⑤遺言書の捜索について、相続が開始した場合、相続人は遺言書の有無について、公証役場だけでなく、法務局にも問合せする必要があります。
⑥外国人による利用について、民法に定める方式に基づかない遺言は、条約などにより有効であっても、保管についてまで日本の制度にて対応する必要性がないことから、遺言書保管制度の対象になりません。もちろん、民法に定める方式に基づいて作成された自筆証書遺言であれば外国人でも保管制度を利用できます。


遺言についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

SHARE
シェアする
[addtoany]

ブログ一覧