相続放棄が10年で1.5倍
こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
このタイトルは2019年12月31日朝日新聞の朝刊1面記事のタイトルです。
今回は相続放棄について考えてみたいと思います。
目次
【相続放棄がとても増えています】
人が亡くなると相続が発生します。通常は、子供、兄弟姉妹などが相続人となり、亡くなった被相続人の遺産を相続するのですが、その遺産を受け継がない「相続放棄」が増えているようです。
朝日新聞の記事では、2018年は約21万件と10年前の1.5倍に増えたようです。司法統計や人口動態統計によると、おおよそ以下になります。
2018年:死者は約136万2千人、相続放棄は約21万件で、1千人あたり154件
2008年:死者は約114万2千人、相続放棄は約14万5千件で、1千人あたり127件
高齢社会白書によると年間136万人の死者数は、2020年に140万人超、2030年には160万人となる見込みで、このまま推移すると相続放棄が今後も増えることが予想されます。
【1】相続放棄が増える要因
相続放棄が増える要因として、主に以下2つがあげられます。
①地方の地価低迷などで、住む予定のない実家などの不動産を相続したくない。
⇒三大都市圏(東京・大阪・名古屋)を除く地方圏の住宅地の公示価格は2018年まで26年連続で下落しています。人口減少で過疎化が進み、土地の価格が下がり続ければ、更にこの要因での相続放棄は増える傾向にあると言えます。
②親族同士が疎遠な関係になってきていて、相続を拒むことがある。
⇒子供がいない被相続人では、甥姪などが相続人になることもあり、疎遠な関係から相続を拒むケースがあります。
バル経済崩壊後は、事業で失敗した親の借金を引き継がないよう相続放棄をするケースが目立っていましたが、現在は要因が少し変わってきています。
【2】相続放棄が増えたことによる影響
相続放棄が増え続けると、親族間の問題だけでなく、空き家や空き地が増えることにより、それらへの対応など社会への影響が広がります。
空き家増えることの問題として、犯罪が起こる原因になったり、建物が老朽化し台風などの自然災害発生で隣地に被害を及ぼすケースがあります。仮に相続人全員が相続放棄をしても、相続財産に不動産がある場合、競売など他人に所有権が移転されるまでは相続人に管理責任があります。しかしながら、この点を知らない人も多く、責任の所在も曖昧になり、関係自治体も対応に苦慮しているようです。
また、不動産の所有権は持分を共有することが可能で、相続人多数で相続したことにより、所有者も多数で権利関係が複雑になり、処分するにも処分できない状態に陥ってしまうケースも多いようです。
【3】この問題を解決していくためには
空き家対策も、各自治体があの手この手で対応をしていますが、特効薬がある訳でもなく、また限界もあるため、これらの抜本的な解決には新たな法整備が求められるのではないでしょうか。
また、私達市民は相続が発生したら決して放置せず適正に手続きを行うこと、また相続が発生する前から親族間で協議する機会を設けるなど、決して他人事ではなく自分事ととらえる意識改革が必要ではないでしょうか。
「相続」が「争続」に、「不動産」が「負動産」にならないように、お正月休みは終わりましたが、実家に不動産が有る方などは親御さんと話し合う機会を設けてみてはいかがでしょうか。
遺言・相続についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。
シェアする