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民法(相続法)改正について その9



こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨年7月、民法(相続法)の大きな改正がありました。
今年7月1日に施行開始となった法律についてご紹介したいと思います。

今回は、【相続の効力等に関する見直しについて(義務の承継に関する規律)】についてとなります。

目次

【相続の効力等に関する見直しについて(義務の承継に関する規律)】

遺言により相続分の指定がされた場合でも、原則として被相続人の債権者は各共同相続人に対して、各共同相続人の法定相続分に応じた権利を行使することができます。
上記の例外としては、被相続人の債権者が共同相続人の一人に対して、遺言により指定された相続分に応じた債務の承継を承諾した場合には、被相続人の債権者は各共同相続人に対して、遺言により指定された相続分に応じた権利を行使することができます。

【1】旧民法のもとでは

旧民法のもとでは、遺言で債務の指定があった場合の債務の承継の方法については、判例が規律していました。
判例(最判平成21年3月24日)は、「相続させる」旨の遺言が、相続分の指定を伴う場合、債務も指定相続分通りに相続人に承継されるとしつつ、相続分の指定の効果は、相続債権者(被相続人の債権者で、相続により相続人を債務者とすることになった者)が承諾しない限り、相続債権者には及ばないとしていました。その理由として、相続債権者は遺言の有無や内容を知らないことがほとんどで、一般的には、法定相続分の分割を予期しています。被相続人が、法定相続分と異なる相続分を指定することは、相続債権者の承諾を得ることなく債務を処分するに等しく、共同相続人に対して多くの相続分が指定された場合には、相続債権者の利益が大きく阻害されることが指摘されていました。

【2】新民法のもとでは

新民法のもとでは、上記の判例(最判平成21年3月24日を採用して、債務の承継に関する規律を明文化したかたちとなります。
「新民法902条の2」のより、遺言の相続分の指定により、承継の割合が法定相続分と異なる指定がされた場合であっても、相続債権者は以下の行使をすることができます。
・各共同相続人に対して、その法定相続分に応じた請求ができる。
・共同相続人の一人にに対して指定された割合での債務の承継を承認した上で、指定相続分に従った請求ができる。
なお、この規律にかかわらず、共同相続人の承継した債務に関する内部負担の割合は、指定相続分に従います。したがって、債権者が共同相続人の一人に対して法定相続分に従い債権の行使をし、その共同相続人が指定相続分を超える弁済をした場合には、その共同相続人は指定相続分を超える部分については、他方の共同相続人に対して求償することができます。

【3】具体例について

【具体例】
被相続人である夫Aが亡くなり、相続人は妻Bと長男Cです。
夫Aは住宅ローンとして、金融機関Yから3500万円借りていて、相続開始時に1000万円の残債務がありました。夫Aはこの住宅ローンの債務について、妻Bに3/10(30%)、長男Cに7/10(70%)を負担させる内容の遺言を作成していました。住宅ローン対象の不動産及びその他預貯金などの金融財産についても、妻Bに3/10、長男Cに7/10の割合で相続させる内容の遺言であるため、妻B長男Cともに異存はなかった。
この事例では、以下のような問題出てくることが想定されます。
(問題1)金融機関Yは、長男Cより財産の多い妻Bに対して住宅ローン残債務の半額500万円を返済するよう求めてきた場合、妻Bは遺言の内容通り債務を30%しか負担しないと金融機関Yに主張できるかどうか。
⇒夫Aの遺言の内容にかかわらず、金融機関Yは、妻Bの対して住宅ローン残債務をBの法定相続分5/10の割合で請求することができます。したがって、妻Bは金融機関Yに対して、夫Aの遺言の内容通りに債務を30%しか負担しないと主張することはできません。
(問題2)妻Bが金融機関Yの要求通り半額500万円を負担した場合、妻Bは長男Cに対して何らかの請求ができるのか。
⇒妻Bが金融機関Yの要求通りに半額500万円(5/10)を負担した場合、妻Bは長男Cに対して、指定相続分3/10を超える部分2/10を求償することができます。
(問題3)金融機関Yが夫Aの遺言の内容を知り、3対7(妻B30%対長男C70%)の割合で債務を負担することを承諾した場合はどうなるか。
⇒金融機関Yが、妻Bまたは長男Cに対して、BとCが3対7で債務を承継したことを承諾した場合は、Bに対して住宅ローン残債務を3/10(30%)でしか請求することができません。この場合は、妻Bは金融機関Yに対して夫Aの遺言の内容通りに債務を30%しか負担しないと主張することができます。

相続についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

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