民法(相続法)改正について その8
こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨年7月、民法(相続法)の大きな改正がありました。
今年7月1日に施行開始となった法律についてご紹介したいと思います。
【相続の効力等に関する見直しについて(相続による権利の承継に関する規律)】
相続させる旨を遺言などにより承継された財産については、登記なくして第三者に対抗することができるとされていた旧民法の規律を見直し、法定相続分を超える部分の承継については、登記などの対抗要件を具備しなければ第三者に対抗することができないことになりました。
上記の「対抗」の意味について簡単に説明します。「対抗」とは、当事者間で既に発生した法律関係を第三者に主張することをいいます。さらには、「第三者に対抗することができない」とは、第三者を保護し取引の安全を確保しようとする場合、当事者間では有効だが、第三者に対しては有効であることを主張できず、一方では第三者からはこれを認めることが可能という法律関係を表すとの表現になります。
目次
【1】旧民法のもとでは
(例)被相続人である母Aが亡くなり、相続人は長男Bと長女Cです。母Aはマンション1棟を所有していて、その相続分7/10を長男Bに、3/10を長女Cに相続させる旨の遺言を作成していました。長男Bは相続開始後もしばらくそのままにしていたが、長女Cは法定相続分5/10を自分の名義にしたうえで第三者Yに譲渡し、Yへの所有権移転登記を済ませてしまいました。これは母Aの遺言の内容に反するので、2/10を第三者Yから取り戻したいと考えています。
(判例)相続人に「相続させる」旨の遺言による不動産の権利取得に関しては、登記なくして第三者に対抗できるものとしていました。(最判平成14年6月10日)
・上記の例では、判例から長男Bは第三者Yに対して権利を主張(対抗)することが可能でした。
・結果的には、遺言の内容を知ることができない相続債権者や第三者の利益を害していました。
・また、登記制度や強制執行制度の信頼を害するおそれがありました。
【2】新民法のもとでは
・相続による権利の承継について、従前の判例による取扱いが見直しされ、法定相続分を超える部分については、登記などの対抗要件を具備しなければ、第三者に対して相続により権利を承継したことを対抗することができなくなりました。
・相続による承継される権利が債権の場合については、法定相続分んを超える債権を承継した相続人は、その承継について遺言や遺産分割に内容を明らかにして債務者に通知したときには、共同相続人全員が債務者に通知したものとみなして、債務者に対して相続により債権を承継したことを対抗できることになりました。
上記の効果として、遺言の有無及び内容を知ることができない相続債権者、債務者の利益や第三者の取引の安全の確保を図り、また登記制度や強制執行制度の信頼を確保することにもつながります。
・上記の(例)では、長男Bは第三者Yに対して権利を主張(対抗)できなくなります。(法定相続分を超える部分である2/10について)
【3】注意する点について
・不動産については、法定相続分を超える部分の権利を第三者に主張するには、登記をすることが必要です。
・債権については、法定相続分を超えて承継した相続人は、遺言書原本を提示し、債務者の求めに応じて、債権の承継の記載部分について写しを交付することで足りるとされています。債務者以外の第三者に対する対抗は、確定日付のある証書に通知が必要です。
相続についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。
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