民法(相続法)改正について その6
こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨年7月、民法(相続法)の大きな改正がありました。
これに付随するかたちで、自筆証書遺言の保管制度が創設されました。
なお、この制度に係る法律として「法務局における遺言書の保管等に関する法律」は2020年7月10日に施行開始となります。
今回は、この制度についての詳細と問題点について説明したいと思います。
目次
【1】現制度のもとでは
現在、自筆証書遺言に係る遺言書は、自宅の金庫、机、タンス、仏壇などに保管されていることが多く、紛失、亡失するおそれがあります。また、相続人により遺言書の廃棄、隠匿、改ざんされるおそれがあり、これらの問題により相続をめぐる紛争が生じている現状があります。
上記の対応策として、公的機関で遺言書を保管する制度を創設されることになりました。
【2】新制度のもとでは
この遺言書保管制度では、遺言者本人が遺言書を持参して保管申請を行うため、保管された遺言書は遺言者の意思に基づき作成されたことが強く推認されます。この制度を利用することにより、遺言書の滅失、隠匿、改ざんの防止につながり、また相続開始後、相続人が家庭裁判所に対して行う検認申請が不要になります。
この制度概要は以下となります。
【制度概要】
・全国の法務大臣の指定を受けた法務局に遺言書を保管することができ、自筆証書遺言の原本のほか画像データも保管されます。法務局が大規模災害に見舞われた場合、遺言書原本が滅失する可能性がありますが、遺言書保管開始時に画像データを別の場所で保管されることが想定されています。
・遺言書保管制度を利用するには、管轄の法務局に遺言者本人が出向いて保管申請を行います。保管申請には、所定の申請書、遺言者の本人確認書類、法務省令の方式に従ったむ封をしていない自筆証書遺言を提出する必要があり、また所定の手数料を納めなければなりません。
・遺言者が存命中は、原本を保管している法務局に遺言者本人が行くことにより、遺言書の返還や閲覧を求めることができます。また、遺言者本人以外は、遺言者の遺言が保管されているかを確認することができません。
・遺言者の相続開始後については、全国の指定された法務局で、申請書と所定の書類(戸籍関係書類など)を提出及び所定の手数料を支払うことで、遺言書の有無を照会し、遺言書の画像データなどを印刷した遺言書情報証明書を受け取ることができます。この遺言書情報証明書を受けとった場合や遺言書原本を閲覧した場合には法務局から、他の相続人、受遺者、遺言執行者等に対して、遺言書が保管されていることが通知されます。
・遺言書原本は、遺言者死亡後の返還は予定されておらず、一定期間経過後は廃棄され、画像データなども消去されます。
【3】この制度利用で注意する点について
この制度を利用するにあたり、いくつかの注意点がありますので、参考にしていただければと思います。
・遺言書保管制度利用には、所定の手数料を支払う必要がります。
・自筆証書遺言作成には、民法で規定された形式要件があります。遺言書保管申請の際、この形式要件が事実上確認されることは想定されるものの、形式要件が充たされているかを保証するものではありません。よって形式不備による遺言の無効、内容不備により相続開始後争いになる可能性はありえます。
・遺言者が存命中は、遺言者本人以外は、遺言者の遺言が保管されているかを確認することができません。
・遺言書の捜索について、相続が開始した場合、相続人は遺言書の有無について、公証役場だけでなく、法務局にも問合せする必要があります。
・外国人による利用について、民法に定める方式に基づかない遺言は、条約などにより有効であっても、保管についてまで日本の制度にて対応する必要性がないことから、遺言書保管制度の対象になりません。もちろん、民法に定める方式に基づいて作成された自筆証書遺言であれば外国人でも保管制度を利用できます。
遺言についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。
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