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民法(相続法)改正について その3



こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨年7月、民法(相続法)の大きな改正がありました。
今年7月1日に施行開始となった法律についてご紹介したいと思います。

【相続開始後の共同相続人による財産処分について】
相続開始後、遺産分割前に、共同相続人の一部が、遺産に属する財産を全部または一部を処分された場合でも、処分された遺産を遺産分割の対象とすることができるようになりました。また、遺産分割前の預貯金の払い戻し(新民法909条の2)の場合であっても、払い戻された預貯金を遺産分割前の範囲に含めることができると解されます。
→計算上生じてしまう相続人間の不公平を是正する制度です。

目次

【1】以前の制度について

特別受益のある相続人が、遺産分割前に遺産を処分した場合、他の相続人との間に不公平が生じている。
【事例】
相続人:長男、二男(法定相続分1/2)
遺 産:預金2000万円
特別受益:長男に生前贈与2000万円
長男が相続開始後に密かに預金1000万円を出金した場合
(長男の出金が無かった場合)
 長男(2000万円+2000万円)×1/2-2000万円=0円
 二男(2000万円+2000万円)×1/2=2000万円
 →長男 0円+2000万円=2000万円
  二男 2000万円
(出金された場合の処理)
 遺産分割時の遺産は1000万円のみ
 長男 1000万円×(0/2000万円)=0円
 二男 1000万円×(2000万円/2000万円)=1000万円
 →長男 2000万円(生前贈与)+1000万円(密かに出金)+0円=3000万円
  二男 1000万円
  ※二男が1000万円少なく不公平が生じている。
(民事訴訟における救済の可能性)
 民事訴訟では具体的相続分を前提とした不法行為・不当利得による請求は困難。
 仮に成立しても法定相続分の範囲内にとどまってしまう。(上記ケースだと500万円分)
 →長男 3000万円-500万円=2500万円
  二男 1000万円+500万円=1500万円
  ※依然として不当な払戻しをした長男の利得額が多いままになる。

【2】この制度導入のメリットについて

法律上の規定を設け、処分された財産(預金)について、遺産に戻すことについて処分者(長男)以外の相続人(二男)の同意があれば、処分者(長男)の同意を得ることなく処分された預金を遺産分割の対象に含めることを可能として、不当な出金が無かった場合と同じ結果を実現するようにする。
(本来の取得分)
 長男 0円=1000万円(出金額)-1000万円(二男への代償金)
 二男 2000万円=1000万円(残預金額)+1000万円(長男からの代償金)
(遺産分割審判の例)
 「長男に出金した預金1000万円を取得、二男に残預金1000万円を取得させる。長男は、二男に代償金1000万円を支払え。」
※長男及び二男は、最終的な取得額は各2000万円となり、公平な遺産分割を実現できる。

【3】この制度活用で注意する点について

1.上記の事例で、長男が遺産を処分(出金)した事実を認めない場合、二男のみの同意でよいという新民法906条の2は、長男が遺産を処分(出金)をしたという事実が前提条件となるため、問題が生じる可能性があります。この場合、遺産分割審判に先立って、「遺産確認の訴え」の提起を検討する必要があります。
2.一度共同相続人全員の同意により、この制度(民法906条の2)の適用があった場合、この同意は撤回することはできないと解されます。
3.この制度(民法906条の2)により遺産分割の対象となった場合の評価額が問題となります。この場合、遺産分割の対象は処分された財産そのものと考えられ、そのため不動産や株式が遺産分割の対象となった場合の評価額については鑑定等が必要になると思われます。


相続についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

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