成年後見制度の利用が進まない訳
こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
成年後見制度とは、2000年に導入された、認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力の不十分な方々の生活を保護・支援する制度です。
認知症高齢者が500万人を超すと言われる中、成年後見制度(成年後見・補佐・補助・任意後見)の利用は218,142人(2018年12月時点)にとどまっています。
制度利用が伸びない訳について、最高裁判所が開示している資料、新聞など報道されている記事等をを参考にし、また私の経験や個人的な意見なども交えて書いてみました。
目次
【1】制度利用が進まない訳
1.親族が後見人等になれない
成年後見人等(成年後見人、補佐人及び補助人)が親族である割合は23.2%でしかなく、その内訳では子が52%を占めています。
親族以外が76.8%の割合を占め、その内訳では司法書士37.7%、弁護士29.2%のと専門職が多数を占めています。
2.後見人等の報酬が高額または不透明
親族が後見人等になる場合は無報酬が多いと言われていますが、上記の通り、司法書士などの専門職が後見人等になるケースでは、専門職に支払う報酬が発生します。また具体的な金額は裁判所が決定していますが、その金額が高額であったり、その内訳が分からないなど不透明なケースが見られるようです。
被後見人等の中には、生活保護受給者、障害年金で生活する障がい者もいることから、これらの報酬を支払うことは容易ではありません。
3.被後見人の財産が有効活用できない
成年後見制度で後見人等が行う主な事務は、被後見人の財産管理と身上監護になります。
財産管理では、お金の管理だけでなく所有する不動産なども含まれます。後見人は裁判所から監督されていることもあり、被後見人の財産を極力目減りさせないことを考えます。また、被後見人が家族との旅行などの遊興費に使いたい、所有不動産を売却したいと思っていても裁判所の許可が下りないなど、被後見人の財産がうまく活用されないなど事例が多いと言われています。
【2】制度利用を進めるためには
1.後見人には親族が望ましい
平成31年3月19日付朝日新聞1面の記事で、最高裁判所は「後見人には身近な親族を選任することが望ましい」との考え方を示したとありました。
まさにその通りで、夫や妻が、子供や孫、甥姪など被後見人をよく理解している方が後見人になって当然のことだと思います。もちろん、私も行政書士という専門職ですから、事情があれば専門職が選任されることも必要ですから、後見人等の選任について裁判所は柔軟性のある判断をお願いしたいです。
2.後見人の報酬算定の見直し
平成31年4月3日付朝日新聞1面の記事で、最高裁判所は「本人の財産から後見人に支払われる報酬を業務量や難易度に応じた金額にするよう、全国の家庭裁判所に促す通知を出した」とありました。
まさにその通りで、透明性や公正さが求められ、民間のサービス業などでは当然に行われていることですから、被後見人本人の財産額等だけで決定せず、後見事務の業務量や難易度、後見人の意見を聴取してで決めるべきで事項だと思います。私も任意後見、その他委任契約を受任する際は、このポリシーを基本に対応しています。
また、この制度を利用したくても、後見人への報酬支払いが困難な方へは、国や地方公共団体が助成する制度を拡充していくことが必要です。
3.民事信託(家族信託)との併用活用促進
最近、NHKの番組でも取り上げられ、認知度が上がってきていますが、民事信託(家族信託)は、財産管理や活用及び承継を数代に渡って行える制度で、障がい者の「親亡き問題」にもとても有効な制度です。
身上監護では成年後見を、財産管理では民事信託(家族信託)を併用活用することを検討してはいかがでしょうか。
【3】まとめ
1.後見人には親族がよいのか、第三者である専門職がよいのかは、本人の為かつ親族が納得できる選任をされることが、この制度利用促進につながると考えます。
2.後見人の報酬についても、透明性があり、本人及び親族が納得できる内容であれば、この制度利用促進につながると考えます。
3.民事信託(家族信託)や各種委任契約など、法的制度をうまく併用活用が推進されれば、成年後見制度の有効性も理解が深まると考えます。
成年後見、家族信託についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。
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