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「障がい者」と「障がい者の子供を持つ親」に対する支援について(親亡き後問題)

こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
今回は障がい者と障がい者の子供を持つ親に対する支援について書かせていただきます。
本題に入る前に、内閣府平成30年度白書などから、障がい者の現状をお伝えします。障がい者は全国で936万6千人いると推計され、大きく分けて以下3つに区分されます。
①身体障がい者:先天的あるいは後天的な理由で、身体機能の一部に障害を生じている状態のある者で、推計436万人
②知的障がい者:金銭管理・読み書き・計算など、日常生活や学校生活の上で頭脳を使う知的行動に支障がある者で、推計108万2千人
③精神障がい者:精神や行動における特定の症状を呈することによって、機能的な障害を伴っている状態である者で、推計392万4千人
上記の数字が多いか少ないかは別として、障がい者がこの世を生きていく中で、日々の生活、就労など様々なハンディがある事は紛れもない事実です。特に財産管理や様々な契約などの法律行為については、詐欺や搾取の被害に遭うケースが散見されます。どの様にすれば人として尊厳をもって人生を全うできるのか、健常者である私達はこの問題から目を背けてはいけません。何故なら、健常者も障がい者に、障がい者の親になる可能性があるからです。
障がい者が未成年の間は法定代理人である親が監護しますが、障がい者が成年になり年齢を重ねると同時にその親も高齢になっていきます。親が元気な間は子供の監護をすることが可能ですが、親が認知症などを患い物事の判断能力がなくなってしまった場合、更には親が亡くなった場合には誰が子供の監護をするのか、とても深刻な問題となります。また、少子化、核家族化と言われる現代においては、子供に兄弟姉妹がいない、いてもその子にはその子の人生があり負担を掛けたくないのが親心です。また、親自身に親族がいない、いても付き合いが少なく疎遠の為、とても障がい者の監護をお願いすることができないなど様々な事情があることでしょう。
そこで今回は、「障がい者の親亡き問題(親亡き後問題)」に対して、どの様な準備をしておけばよいかご説明したいと思います。

目次

【1】障がい者がいるご家族全体ではどの様準備が必要でしょうか。

家族信託と成年後見制度の併用が有効的と考えます。

1.家族信託

民事信託で、信託法(※)を基づき、信頼できる家族に自分の財産(金銭や不動産など)の所有権(名義)を移して、その財産の管理や活用及び処分を託す制度を、一般的に家族信託と呼んでいます。個人の財産管理や家族間の資産承継のための信託です。(まさに信じて託す制度です。)
上の図をご覧ください。
「障がい者の親亡き問題」に対応する家族信託の事例の紹介です。
【事例の概要】
・本人には知的障がいのある長女がいる。年金もあり生活には困っていない。本人死亡後の長女の生活について憂慮しているため、長男を受託者、長女を受益者として信託契約した。契約後は信託財産を長男に移転。
・長男が受託者の事務ができなくなった場合は、次女が受託者となる。
・受益者が意思表示ができなくなった時のために、受益者の権利を代理行使する受益者代理人が設定されている。

2.成年後見制度

この制度は、認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力の不十分な方々を保護・支援する制度で、後見人等が被後見人の財産管理や身上監護を行います。具体的には、財産管理では預貯金の管理や払い戻し、不動産やその他重要な財産の管理や処分、遺産分割などを行い、身上監護では介護保険の手続き、福祉サービス利用の契約締結や管理、本人の住居の購入や貸借、医療機関利用の手続き、本人の状況見守りなどを行います。
上の図をご覧ください。
この制度には、法定後見と任意後見があります。

【2】障がい者ご本人にはどの様準備が必要でしょうか。

障がい者ご本人には、以下の利用を準備されてはいかがでしょうか。

1.成年後見制度(法定後見)

親が元気なうちは、この制度の利用は不要かと思いますが、、親が亡くなったり、病気で入院・施設に入所した場合、障がい者の子供は自分で財産管理ができない可能性もあるため、この制度利用を準備されてはいかがでしょうか。
障がい者の四親等内の親族が家庭裁判所に申し立てを行い、審判により、成年後見・補佐・補助が開始されると、障がい者は被後見人・被保佐人・被補助人になります。そして審判で選任された成年後見人・保佐人・補助人により身上監護や財産管理が行われます。

2.グループホームの利用

親が元気なうちは同居も継続できますが、親が亡くなったり、病気で入院・施設に入所した場合、独りで生活できない方も多いかと思います。そこで、障がい者グループホームへの入居を検討してみてはいかがでしょうか。東京都の障がい者グループホームの定員が、平成31年4月現在9,800人を超え、毎年定員が増加しています。グループホームを「施設」とは考えず、「障がい者の特性を理解した住まい」と考えると前向きに検討できるのではないでしょうか。

【3】親ご本人のみにはどの様準備が必要か

親のみに対しては親本人に判断能力がある間に、以下の利用を準備されてはいかがでしょうか。

1.成年後見制度(任意後見)

上の図をご覧ください。
この制度は、親本人に判断能力がある間に、信頼できる第三者と任意後見契約を締結しておき、本人に判断能力が低下した後、本人に対する身上監護や財産管理を後見人に支援を依頼する事ができます。この制度の基本理念である自己決定権の尊重により、本人が後見人を選べ、支援内容を柔軟に決める事ができるのが最大のメリットと言えます。

2.遺言

家族信託契約を利用して承継財産を有効活用できたとしても、信託財産に馴染まない財産が残る可能性があります。例えば、家具・家電・自動車などの動産、お墓などの祭祀財産、年金受取り口座の預貯金などがあげれます。これらを障がいのある子供に相続させる場合は、遺言を作成することにより確実に相続させることができます。

3.死後事務委任契約

ご自身の葬儀などの死後事務はは、障がい者の子供が行うことは困難です。親族に依頼できれば問題ありませんが、身近にいない場合は第三者と死後事務委任契約を締結して、この問題を解決することができます。

【4】このブログのまとめ

1.障がい者を子供に持つ親は、いつでも子供の事が心配です。だからこそ、今から「親亡き問題」について何か具体的に検討していきませんか?
2.家族信託、成年後見制度、遺言、死後事務委任契約など様々な法的な制度を組み合わせての利用を検討しませんか?
3.もちろん、上記全ての制度利用が完全とは言えません。経済的やその他ご家族の事情もあるかと思いますので、私たち専門家だけでなく行政とも相談しながら進めていきましょう。


「障がい者の親亡き問題」についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

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