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任意後見制度とはなに?



こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
みなさんは、成年後見制度についてご存知でしょうか?
知っていても、知的障がい者、精神障がい者が利用する制度で、健常者には関係がないと認識されている方も少なくないのではないでしょうか。
この先、健常者も高齢者になり、認知症を患ったり病気や事故で精神障がい者になる可能性があることから、全く無縁と言えません。
今回は、ご自身に判断能力がある間に、将来判断能力が不十分な状態になった時に備え、あらかじめ後見人を選んでおく「任意後見制度」についてご説明します。

目次

【1】成年後見制度とはなにか

まず最初に、成年後見制度の概要についてご説明します。
1.平成12年4月1日施行の改正された民法(※1)により制度化されました。
2.この制度の基本理念は以下の通りです。
  ①自己決定権の尊重
  ②残存能力の活用
  ③ノーマライゼーション
3.具体的には、認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力の不十分な方々を保護・支援する制度です。
4.成年後見制度には、法定後見と任意後見があります。
5.平成30年の成年後見関係の申立ては、後見開始が27,989件、保佐開始が6,297件、補助開始が1,499件、任意後見監督人選任が764件、合計36,549件(※2)でした。

(※1) 民法:市民生活における市民相互の関係、つまり財産関係(売買・賃貸借・不法行為など)と家族関係(夫婦・親子・相続など)を規律する法のこと。
(※2) 最高裁判所事務総局家庭局の資料より。

1法定後見とはなにか

①認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力の不十分な方が対象となる制度です。
②家庭裁判所が選任した成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人が自分で法律行為をする時に同意を与えたり、本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取消したりすることにより、本人を保護・支援します。注意点として、成年後見人等の職務は、本人の財産管理や契約などの法律行為に限定され、食事の世話や実際の介護などの事実行為は成年後見人等の職務ではありません。
③制度利用には、本人、配偶者、4親等内の親族、検察官、任意後見人、任意後見監督人、市町村長などが家庭裁判所に対して「後見開始の審判」の申立てが必要です。
④本人の判断能力の程度により、成年後見、保佐、補助(※1)の3つに区分されています。

(※1)【成年後見】本人が精神上の障害により、事理を弁識する能力を欠く状況である場合
   【保佐】本人が精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分である場合
   【補助】本人が精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分である場合

2任意後見とはなにか

①法定後見とは違い、本人に十分な判断能力がある間に、将来判断能力が不十分な状態になった時に備え、あらかじめ自らが選んだ代理人(任意後見人)に、身上看護(※1)や財産管理(※2)に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を、公証人の作成する公正証書(※3)で締結するものです。法定後見同様、後見人の職務は法律行為に限定され、事実行為は職務ではありません。
②契約締結後、本人の判断能力が低下した時、任意後見受任者などが、家庭裁判所に「任意後見監督人選任」の申立てを行います。その後、任意後見監督人選任により、任意後見が発効され、任意後見人が任意後見監督人の監督のもと、本人を代理して法律行為などをすることにより、本人の意思に従った適切な保護・支援を行います。

(※1)身上監護:介護保険の手続き、福祉サービス利用の契約締結・管理、本人の住居の購入や貸借、医療機関利用の手続き、本人の状況見守りなど。
(※2)財産管理:預貯金の管理や払い戻し、不動産やその他重要な財産の管理や処分、遺産分割など。
(※3)公正証書:公証役場の公証人が、公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。公文書のため、高い証明力があり、滅失・改ざんの恐れがありません。

【2】任意後見制度の詳細

まず、任意後見には以下3つの形態があります。
1.【移行型】
・財産管理や見守り事務(※1)を行うことを内容とする任意代理の委任契約と任意後見契約を同時に締結する形態です。当初は委任契約に基づく事務を行い、本人の判断能力低下後に任意後見事務に移行します。
・任意後見契約発効後は、各委任契約終了の契約条項を盛り込む必要があります。
2.【即効型】
・任意後見契約の締結後、直ちに任意後見監督人選任の申立てを行う形態です。
・軽度の認知症、知的障害、精神障害で、法定後見補助制度の対象者でも、契約締結時において意思能力を有する限り、任意後見契約締結は可能とされています。
3.【将来型】
・財産管理や見守り事務を行うことを内容とする任意代理の委任契約を締結せず、任意後見契約のみ契約する形態です。
・任意後見法が予定している任意後見契約は、この将来型です。

(※1) 見守り事務:電話や訪問など定期的に連絡を取ることで、心身の健康状況を把握し、生活を見守ることを目的とする事務です。

1任意後見制度の概要について

上記の図をご覧ください。
①本人と任意後見受任者との間で任意後見契約を締結します。
②本人の判断能力の低下が見られたとき、任意後見受任者などが、家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行います。
③任意後見受任者と任意後見人は同一で、任意後見監督人選任後に後見が開始されます。
④家庭裁判所は間接的に任意後見人を監督します。
⑤任意後見監督人は、家庭裁判所に対して後見事務に関して定期的に報告します。

2任意後見契約締結の登記件数

上記の図をご覧ください。
①任意後見契約は、法律で公正証書作成での締結が義務付けられていて、締結後は公証人の嘱託により登記されます。
②グラフからも分かるように、契約締結件数は平成27年からは1万件を超え、今後も増加が見込まれます。


3任意後見と法定後見の比較、任意後見の長所・短所

上記の図をご覧ください。
①任意後見と法定後見を比較してみました。
②任意後見の長所・短所を書き出してみました。
(1)長所
・法定後見制度と比べて支援内容の幅が広く、任意後見人の選定も本人の意思が尊重される。
 →この制度の理念である自己決定権の尊重が最大限図れます。
・現在本人に判断能力の低下がなくても利用できる。
 →将来への備えができます。
・後見事務について、任意後見監督人による監督を受けることができます。
 →安心して制度利用ができます。
・契約は公文書である公正証書として作成し登記される。
 →信用力が高まります。
(2)短所
・本人の判断能力が低下している状態からは利用できない。
 →即効型といわれる任意後見契約を利用できる可能性あります。
・本人死後の事務、財産管理を委任することができない。
 →死後事務委任契約締結や遺言で補足できます。
・当然には取消権が無い。
 →詐欺・脅迫や消費者契約法に基づく取消し権の代理権付与で対応可能です。
・任意後見監督人に対する報酬支払いが必要です。

4任意後見締結から開始までの流れ

①契約締結
(1)任意後見受任者(任意後見人)の選定及び依頼する内容を決定
(2)本人と任意後見受任者の間で任意後見契約締結
(3)契約内容を公証人が公正証書にして登記
 ↓
②任意後見監督人選任の申立て
(1)本人の判断能力が低下した時、任意後見受任者などの申立て権者から、家庭裁判所に対して任意後見監督人選任の申立て
(2)家庭裁判所が任意後見監督人を選任
 ↓
③後見開始
(1)任意後見受任者は任意後見人となり、契約した後見事務を遂行
(2)任意後見監督人は任意後見人を監督し、後見事務について定期的に家庭裁判所に報告

【3】まとめ

1.この制度は、自分が信頼できる子供、友人、知人、専門家などを後見人として選任することができます。
2.後見人に与える代理権についても、ご自身の希望が反映されます。
3.任意後見契約の不足部分を補うため、下記を追加検討する必要があります。
①見守り契約⇒判断能力がどの状態にあるか定期的(面会や電話)に見てもらい、任意後見制度に移行する時期を見定めます。
②財産管理契約⇒金融機関での現金引出し・預入・振込、公共料金支払い、家賃支払い、各種保険の契約・解約、保険金の請求などを本人に代わり行います。
③死後事務委任契約⇒任意後見契約は、本人生存中のみ有効で、本人死亡により終了します。家族や相続人などがいない場合に有効な契約です。死亡の連絡、役所への届出や加入団体への退会届出、葬儀や埋葬の手続き、医療費の清算、介護施設や老人ホームへの支払い、遺品整理・処分などを委任できます。
④遺言書作成⇒相続は必ず発生し、被相続人も相続人同士の不毛な争いは望んでいないはずです。また、相続人がいない場合には、生前お世話になった人や団体などに財産を遺贈することや、遺言内容を執行する遺言執行者を、遺言で指定することできます。滅失や改ざんの恐れの無い、公正証書遺言がおすすめです。

任意後見についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

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