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民法(相続法)改正について その10



こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨年7月、民法(相続法)の大きな改正がありました。
今年7月1日に施行開始となった法律についてご紹介したいと思います。

今回は、【遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果など】についてとなります。

目次

【遺言執行者がある場合における相続人の行為の効果など】

・旧民法のもとでは、遺言執行者がいる場合、相続人が遺言執行の妨害などの行為をした場合の効果は、絶対的無効と解されていましたが、新民法では絶対的無効ではなく、善意の第三者との関係では無効を主張することができないとしました。
・遺言執行者がいる場合でも、相続人の債権者、相続債権者(被相続人の債権者)は相続財産について権利を行使することが可能となりました。

【1】旧民法のもとでは

遺言執行者がいる場合における相続人の行為の効果について、旧民法1013条は、「遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。」と規定していました。この規定は、相続財産の管理処分権限を遺言執行者に集中させることで、遺言者の意思を尊重し、遺言執行者の公正な実現を図らせるとの趣旨がありました。過去の判例も、旧民法1013条に違反して相続人が遺言執行の妨げる行為をした場合の効果を絶対的無効と解していました。
しかしながら、この結論は、遺言や遺言執行者の存在を公示する制度が民法にはなく、遺言や遺言執行者の存在を知ることが困難である第三者の取引の安全を損なうことが以前から指摘されていました。

【2】新民法のもとでは

新民法では、取引の安全に配慮した規定が制定されました。
・1013条2項では、遺言執行者がいる場合における、相続人が遺言執行の妨害などの行為をした場合の効果は、絶対的無効を改め、善意の第三者との関係では対抗できないとしました。これは、遺言執行者による適正かつ迅速な遺言執行の実現と、第三者の取引の安全を配慮させることを図ったものとなります。また、第三者を保護する要件としては、善意のみならず無過失まで要求すると、第三者が相続人と取引をする際に、遺言の有無などについて調査する義務を負わせることとなり、相当ではないとの理由で、無過失までは不要となりました。
・新民法1013条3項では、遺言執行者がいる場合であっても、相続人の債権者、相続債権者(被相続人の債権者)が、相続財産についてその権利を行使することを妨げないとしました。

【3】具体例について

【具体例】
被相続人であるAが亡くなり、相続人は長男Bのみです。
Aは投資用不動産(マンションの1室)を相続人でないAの前妻Cに遺贈する内容の遺言を残していて、遺言執行者として行政書士Fが指定されていました。遺言執行者であるFから前妻Cに対して、投資用不動産の登記の名義が長男Bに移転登記された後、第三者Zに移転登記されているとの連絡がされた。行政書士Fによると、長男Fが投資用不動産の所有権を自己に移転登記したあと、第三者Zに譲渡して、Zへの移転登記を済ませていたとのことでした。これは、Aの遺言に内容に反することなので、前妻Cは投資用不動産を取り戻すことができるのでしょうか。
(具体例の検討)
長男Bが投資用不動産をZに譲渡した行為は、遺言の執行を妨げるべき行為で無効です。もっともZが遺言執行者がいること及びこの譲渡が遺言の執行を妨げるべき行為であることを知らなかった善意の第三者である場合には、この譲渡の無効をCはZに対抗することができません。従ってこの場合には、CはZから投資用不動産を取り戻すことができません。

相続についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

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