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民法(相続法)改正について その7

 



こんにちは。東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」です。
昨年7月、民法(相続法)の大きな改正がありました。
今年7月1日に施行開始となった法律についてご紹介したいと思います。

【遺留分制度の見直しについて】
①遺留分減殺請求権から生じる権利を、対象財産の共有状態が生じるという物権的効果から、金銭債権が生じるいう債権的効果に改正されました。
②金銭を直ちに用意することができない受遺者又は受贈者の利益を図るため、受遺者などの請求により、裁判所が金銭債務の全部又は一部の支払いにつき、相当の期限を許与することができるようになりました。

最初に言葉の意味を説明します。
「遺留分」とは何か。
→相続人に法律上確保された最低限度の財産の取り分のこと。これは、遺言にによっても侵害することができません。
「遺留分減殺請求権」とは何か。
→遺留分を侵害された相続人が、侵害した相続人や受遺者などに、この遺留分を請求する権利のこと。遺留分減殺請求については特別な方法や手続というものはなく、裁判外での交渉による回収もできますし,裁判所に訴訟を提起して回収することもできます。
「遺留分の割合」はどのくらいか。
→配偶者や子が相続人の場合は相続財産の2分の1、直系尊属のみが相続人の場合は相続財産の3分の1で、兄弟姉妹には遺留分権利がありません。

それではこの遺留分制度について、旧民法と新民法とではどのように変わったか説明したいと思います。

目次

【1】旧民法のもとでは

①遺留分減殺請求権の行使によって、財産の共有状態が状態が生じる。
→遺贈等受けた財産が、株式や事業用財産である場合、共有状態が生じることにより、その財産を処分することが困難になり、事業承継の支障がきたすとことが懸念されていた。
②遺留分減殺請求権の行使によって生じる共有割合は、目的財産の評価額等の基準に決まるため、分母・分子とも極めて大きく複雑な数字となってしまう。
→持分の処分に支障が出るおそれがある。
(例)被相続人が会社を経営していて、事業を手伝っていた長男に会社の土地建物(評価額1億1123万円)を、長女に預金1234万5678円を相続させる旨の遺言を残した。(配偶者は先に死亡している。)遺言の内容に不満がある長女が長男に対して遺留分減殺請求をした場合、長女が侵害された遺留分は以下となる。
 侵害額:1854万8242円={(1億1123万円+1234万5678円)×1/2×1/2-1234万5678円}
会社の土地建物が、相続人の長男と長女で共有状態になった場合、以下のような複雑な持分割合になる可能性がある。
 長男:9268万1758/1億1123万
 長女:1854万8242/1億1123万

【2】新民法のもとでは

①遺留分減殺請求権の行使により、共有状態が当然に生じることを回避することができます。
→今回の改正により、遺留分権利者は遺留分減殺請求権の行使することにより、遺留分侵害額相当額の金銭債権が発生することとし、物権的効果から債権的効果に改められました。共有状態が当然に生じることを回避することができます。
(例)上記の例では、長女は長男に対して、1854万8242円請求できます。
②金銭を直ちに用意することができない受遺者又は受贈者の利益を図るため、受遺者などの請求により、裁判所が金銭債務の全部又は一部の支払いにつき、相当の期限を許与することができるようになりました。
→遺留分減殺請求権の行使により、負担する債務額が決まっているにも関わらず、受遺者等が遺留分侵害額相当額の金銭を用意できない場合に利用することができます。これは、借地借家法13条2項(建物買取請求権を行使された借地権設定者の請求による代金債務の期限の付与)や民法196条2項(有益費償還請求を受けた占有物の回復者の請求による有益費支払債務の期限の付与)などの例を参考にして設定された制度となります。
③遺贈や贈与の目的財産を受遺者等に与えたいという遺言者(被相続人)の意思を尊重することができます。

【3】受遺者等の負担額について

受遺者又は受贈者は下記に従い、遺贈等の目的の価額を限度として遺留分侵害額を負担することとなります。
①受遺者と受贈者がいるときは、受遺者が先に負担します。
②受遺者が複数いるとき、または受贈者が複数いる場合において、その贈与が同時にされたものであるときは、受遺者または受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担します。ただし、遺言者が遺言に別段の意思表示があったときは、その意思に従います。
③受贈者が複数いるとき(②に規定する場合を除く)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担します。
これらは、遺留分減殺請求の法的性質の見直しにより、金銭負担の順序及び割合を定めることとしたもので、実質的には旧民法の制度変更はありません。


相続についてお困りの際は、東京都町田市の「相続東京町田相談室 行政書士北尾芳信」へご相談ください。

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